書評『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内 都喜子)

フィンランド初心者におすすめ★★★★★

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか

著者の堀内さんは現在はフィンランド大使館の広報をされている。フィンランドの大学院を卒業後フィンランド系の企業を経験。2019年にワークライフバランス世界1位になったフィンランド流の働き方&生き方が存分に分かる一冊。たくさんのデータはもちろん、著者がこれまで関わってきたフィンランド人とのやりとりがたくさん出てくるので、どこか遠い国感が抜けないフィンランド人が身近に感じる。そして日本人なら親近感を覚えて好きになるに違いない、そんな本です。

統計からみるフィンランド。

世界幸福度ランキング(2021年時点で4年連続1位!)、GDPは日本の1.25倍、「良い国ランキング」1位、格差が世界で2番めに少ない、マクロ経済の安定世界1位、ヨーロッパのシリコンバレー、首都ヘルシンキがワークライフバランス世界1位などなど。

フィンランド人の働き方について。

この著書は2019年発売で、その時点で在宅勤務は3割。2020年の感染症騒ぎでもこれが功を奏したのであろう、フィンランドは比較的スムーズに在宅ワークへのシフトが行われ、感染者数においても隣国スウェーデンとくらべても少なかったようだ。

残業しないのができる人の証拠として、仕事は仕事、終わったら家族や趣味や運動などのプライベートな時間に、スイッチの切替が上手。

プライベートな時間を潰してしまう飲みニケーションは無く、コミュニケーションはコーヒー休憩だ。これは法律で決められている。

フィンランド人の上手な休み方について。

夏休みは4週間。湖大国で夏の時間を大事にするフィンランド人は湖の畔にサマーコテージを持つ人が多い。そのサマーコテージはコテージによっては電気も水道も通っていない場合もありデジタルデトックスにはうってつけだ。ボートやヨットを持つ人も多い。DIYやベリーやきのこ狩りも人気。

フィンランド人の生き方、考え方について。

フィンランド人といえばSISU(シス)。日本語に同じ意味の単語がないが、似ているものとして「ガッツ」「忍耐」「困難に立ち向かう気持ち」。フィンランドの戦争やオリンピックの話になるとSISUという単語が出てくるイメージ。つまり現代ではそこまで日常的に使うものではないが、確かに国民にあるマインドのように私は感じている。「侍魂」というとちょっと違う気がするが、日本人は特に親近感を覚えるのではないだろうか。

フィンランド関連の書籍を読むと頭に浮かぶワード

合理的。放任主義。シンプルさ。シャイ。適度な距離感。身近な自然。それでいてITなども身近。子供も大人も生涯教育。女性が活躍。

このように客観的に見るとものすごく良い国に思えるけど当人らにしてみればもちろん色んな問題を抱えていて、良いことばかりじゃないよ、と著者堀内さんの何人もの身近なフィンランド人は言うし、著者も思っているけれど、それはその通りなのだろう。

だけど、フィンランド人はとても自虐的らしいことも他の本を読んでも確からしい。

人口550万人の小国で、ノルウェーのような原油資源も無く、独立して100年かそこら。

客観的に見てこれだけ成長してこれだけ高福祉で政治汚染もほぼなく女性に優しく、しかも働きやすい。これは色んな世界統計で数字で表されている通りだ。となると世界の注目はさらに大きくなっている。

15年ほど前はフィンランドの情報を集めるのに苦労していたのに、日本でも毎年フィンランド関連の書籍がたくさん発売されているし、ネット上でも日本語の記事がたくさん見つかる。

個人的にはそれが嬉しいような、みんなにはあまり見つかってほしくなかったような、そんな気持ちだったけど、この著書を読んでそれが公式になった気がする。

今後はもっと踏み込んだ本がたくさん出版されることを願う。特に一般向けではなく教育系のプロの方向けに。。

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